17. ルーティングと入出力

Liveでいう「ルーティング」とは、トラックの信号ソースの選択と送信先(トラックの入力や出力)を設定することをいいます。 ルーティングに関する設定は、ミキサーのトラック入力/出力セクション で行うことが最も多く、このセクションはすべてのトラックにあり、信号のソースと送信先を選択するセレクターを備えています。 ミキサーの入力/出力セクションは、Liveの「パッチベイ」です。

ミキサーの入力/出力セクション

ミキサーの入力/出力セクションは、セッションビューとアレンジメントビューの両方で表示でき、Liveのウインドウ右下にあるミキサービュー・コントロールの[入力/出力]メニューや、[表示]メニューの[ミキサーコントロール]サブメニューにある[入力/出力]またはショートカット CtrlAltI (Win) / CtrlOptionI を使用すると表示できます。

ミキサービュー・コントロールのオプションメニュー

クリップを再生するすべてのトラックには、[入力/出力]セクションが同じレイアウトで配置されています。

  • 上側の2つのセレクター([Audio/MIDI From])でトラックの入力を選択します。 オーディオトラックにはオーディオ入力、MIDIトラックにはMIDI入力を備えています。 リターントラックには、対応するセンド から送られてきた信号が入力されます。
  • [Monitor]のボタンでモニタリングのモードを選択します。入力信号がトラックを通してどのように聞こえるかを設定します。
  • 下側の2つのセレクター([Audio/MIDI To])でトラックの出力を選択します。 インストゥルメントのないMIDIトラックを除き、すべてのトラックはオーディオ出力を備えています。 インストゥルメントではMIDIからオーディオに変わる ことにご注意ください。

セレクターペアの上部では、信号のカテゴリ(オーディオまたはMIDIインターフェースを介した外部接続[Ext.]など)を選択します。 この信号タイプにサブセレクションまたはサブチャンネルがある場合は、下部セレクター(入力/出力チャンネルセレクター)から選択できます。 [Ext.]の例では、オーディオ/MIDI入力と出力が個々に存在することになります。

17.1 モニタリング

Liveでは、トラックの入力信号をトラックの出力に通過させることを「モニタリング」といいます。 オーディオトラックがギターから入力信号を受信するよう設定されているとします。 その場合、モニタリングされるのは、その場で演奏しているギターの音がトラックのデバイスチェーンを経由して、トラックの出力に届いた音です。 トラックの出力を[Main]に設定していると、ギターの音がエフェクト処理されて(そしてオーディオインターフェースのレイテンシーで遅延して)スピーカーから聞こえます。

[入力/出力]セクションには、どのオーディオトラックやMIDIトラックにも [Monitor] ボタンが備えられていて、次の2つのオプションを選択できます。

  • デフォルトの [Auto] モニタリング設定は、簡単なレコーディングでの使用に適しています。トラックの 録音アームがオン になると、モニタリングもオンになりますが、トラックがクリップを再生してる間はモニタリングが止まります。

  • トラックのアーム状態やクリップの再生にかかわらず、トラックの入力を常にモニタリングしたい場合は [In] を選択します。 一部のシステムでは、この設定にすると、このトラックが「Aux」と呼ばれる働きに変わります。トラックは録音には使用されず、他の場所から信号を取り込むために使用されます。 この場合、このトラックのクリップの出力は聞こえません。 モニターが[In]に設定されている場合、トラックのアクティベータースイッチが青に表示されるので、[入力/出力]セクションを表示していなくても簡単に識別できます。

  • [Off]を選択して、モニタリングをオフにすることもできます。 この機能は、外部ミキサーをモニタリングに使用したり、コンピューターのモニタリングを使わず「ダイレクトモニタリング」できるオーディオインターフェースを使用して、「空気を通した」モニタリングで生楽器を録音する時に便利です。 一般的に、レーテンシーが小さい(数ミリ秒程度の)オーディオインターフェースを使うことが望ましいとされています。 モニターリングを[Off]にしてLiveに録音する場合、環境設定[Audio]で[レイテンシー]を調節するとよいでしょう。 レイテンシーの調節については、プログラム内蔵のチュートリアルをご参照ください。

モニタリングを[In]または[Auto]に設定している場合、デフォルトで[録音中にモニタリングのレイテンシーを保持]オプションが有効になります。 この機能は、録音のタイミングを調整して、Liveのモニタリングを通して聞こえる音と一致するようにします。 一般的に、ソフトウェアのインストゥルメントやエフェクトを録音する時は、このオプションはオンのままにすることを推奨して、生楽器の録音や外部モニタリングを使用する場合は、オフにすることを推奨します。 手動で[録音中にモニタリングのレイテンシーを保持]を切り替えるには、モニタリングのボタンの[In]か[Auto]を右クリックします。

複数のトラックを選択している場合、選択したトラックのいずれかのモニターボタンを押すと、選択した他のトラックすべてにも適用されます。

また、モニターボタンをデフォルトの状態に戻すこともできます。 [入力/出力]セクションが表示されている場合、[Monitor]をデフォルト(オーディオトラックは[Off]、MIDIトラックは[Auto])に戻すには、Deleteキーを押すか、[編集]メニューの[デフォルトに戻る]を選択します。

17.2 外部オーディオ入力/出力

オーディオインターフェースの入力を選択するには、オーディオトラックの[入力タイプ]セレクターで[Ext. In]で設定します。 入力チャンネルのセレクターには、各入力チャンネルが表示されます。 セレクターのエントリ名の横にはメーターがあり、信号レベルと過負荷(メーターが赤く点滅します)を確認できます。 オーディオインターフェースの出力設定は、出力セレクターを使用して同じように設定できます。 複数のトラックを選択している場合、選択したトラックでいずれかのセレクターを変更すると、選択した他のトラックすべてにも適用されます。

選択可能な入力と出力の一覧は、環境設定[Audio]の設定内容により変わります。環境設定[Audio]は、入力/出力チャンネルのセレクターの[Configure…]から開くことができます。 環境設定[Audio]には[チャンネル設定]ダイアログがあり、[入力設定]と[出力設定]にアクセスできます。 このダイアログでは、使用する入力ポートと出力ポートと、Liveでモノラルまたはステレオペアのどちらを使用するかを設定できます。 [チャンネル設定]ダイアログは、コンピューターとオーディオコンポーネントの接続に関する情報をLiveに伝えます。

[チャンネル設定]ダイアログに表示される入力と出力のチャンネルは、すべて名前を変更できます。 名前を変更すると、入力/出力チャンネルのドロップダウンセレクターに新しい名前が表示されます。 Tab キーを使用してチャンネル間を移動することで、チャンネル名をより早く変更できます。 変更したチャンネル名は、対応するオーディオデバイスに紐付けされます。

17.2.1 モノ/ステレオ変換

オーディオトラックの入力にモノラル信号が選択されている場合、トラックはモノラルでサンプルを録音します。それ以外ではステレオでサンプルを録音します。 トラックの入力がモノラルの場合や、トラックがモノラルサンプルを再生する場合でも、トラックのデバイスチェーンの信号は常にステレオになります。

モノラルがステレオに変換される場合、左右のチャンネルに同じ音声が使用されます。 トラックがモノラルの出力に接続されている場合、左右チャンネルは加算され、クリッピングを防ぐため6dB減衰されます。

17.3 外部MIDI入力/出力

外部からのMIDIは、オーディオと同じようにLiveへルーティングされます。 MIDIトラックの[入力タイプ]セレクターから、指定のMIDI入力ポートを選択するか、外部MIDIポートすべてからの入力をマージする[All Ins]を選択することができます。 [入力チャンネル]セレクターでは、選択したMIDIポートの各入力チャンネルや、全チャンネルの信号をマージする[All Channels]を選択できます。 オーディオ入力と同じように、入力チャンネルセレクターの各エントリの横には、チャンネル入力の動作を表示するメーターが備えられています。 MIDIトラックを複数選択している時は、選択したトラックのいずれかでセレクターを変更すると、選択している他のトラックすべてに適用されます。

17.3.1 MIDIの入力ポートと出力ポート

環境設定[Link, Tempo & MIDI]のMIDIセクションでは、[Inputs] と [Outputs] オプションで、LiveがどのMIDIポートを使用可能にするか設定できます。 選択可能な入力/出力ポートは、すべてここに一覧表示されます。 トラックのMIDI入出力に使用するMIDIポートは好きな数だけ使用できます。 ミキサーの入力/出力セレクターで、使用するポートを個別に指定できるようになります。

環境設定に表示されたMIDIポートの入力と出力の一覧

17.3.1.1 トラック

トラック を有効にすると、MIDIキーボードで演奏やピッチを入力するときなどに、LiveがMIDIノートおよびCC(コントロール・チェンジ)メッセージを送受信できるようになります。

次の場合に、MIDI入力ポートの[トラック]をオンにします

  • MIDI鍵盤でLive内のインストゥルメントを演奏する。
  • MIDIノートをMIDIクリップに記録する。
  • MIDI CCメッセージをMIDIクリップへ録音する(例:外部ハードウェアシンセサイザーのパラメーター操作を記録する場合)。

次の場合に、MIDI出力ポートの[トラック]をオンにします

  • 外部ハードウェア(シンセサイザーやドラムマシンなど)を鳴らす。
  • MIDIノートを他のアプリケーションに送信する(仮想MIDIバスを使用)。
  • MIDI CCメッセージのオートメーションを外部機器や他のアプリケーションに送信する。

注: 出力ポートでMIDIコントローラーの[トラック]をオンにする必要があるのは、MIDIコントローラーに音源が内蔵されている場合のみです。

17.3.1.2 同期

[同期] を有効にすると、LiveでMIDIクロックの送受信や、MIDIタイムコードの受信が可能になります。 なお、MIDIコントローラーに内蔵シーケンサーまたはアルペジエーターが組み込まれていない限り、入力ポートや出力ポートの[同期]を有効にする必要はありません。

次の場合に、MIDI入力ポートの[同期]をオンにします

  • Liveを外部シーケンサー、ドラムマシン、またはグルーヴボックスに同期させる。
  • MIDIを使用してLiveを別のDAWに同期させる。

次の場合に、MIDI出力ポートの[同期]をオンにします

  • MIDIクロックを使って、シーケンサー、ドラムマシン、グルーヴボックスなどの外部ハードウェアをLiveに同期させる。
  • MIDIクロックを使って別のDAWをLiveに同期させる。
  • 外部シンセサイザーやMIDIコントローラーに内蔵されたLFOやアルペジエーターをLiveに同期させる。

出力ポートに対して[同期]がオンになっている場合、ポート名の横にある三角形を押すと、同期の追加設定にアクセスできます。

同期の出力オプション

[MIDIクロック同期ディレイ] の量を調整すると、出力されるMIDI同期信号をミリ秒単位で遅延させることができます。 これは、Liveと外部機器の間で発生したタイミングの問題を修正する時に役立ちます。

[MIDIクロックタイプ] は[Song]と[Pattern]のどちらかに設定できます。 [Song]モードでは、再生位置が変わる度に、Liveが ”ソングポジションポインター”(SPP)と ”コンティニュー” のMIDIメッセージを送信します。 [Pattern]モードでは、Liveが送信するのは、次の小節の開始位置で送信する”スタート”のMIDIメッセージのみです。 お使いのMIDI機器がSPPメッセージを認識しない場合は、[Pattern]モードを使用しましょう。

[外部ハードウェアの再同期] オプションを有効にすると、[ハードウェアを再同期] のドロップダウンメニューから、再同期メッセージを送信する方法を選択できます。

ハードウェアを再同期のオプション

有効にすると、Liveのコントロールバーに[外部ハードウェアの再同期]ボタンが表示され、外部機器に再同期のメッセージを送信できるようになります。 Liveセットを再生中に、同期中のハードウェアとタイミングがずれてしまった場合に便利です。

コントロールバー内の、外部ハードウェアの再同期ボタン

このデフォルトの動作は [Stop and Start] に設定されています。これは、MIDIクロック停止のイベントと、それに続いてMIDIクロック開始のイベントを送信する再同期のメッセージで、多くのMIDI機器に対して適切に動作します。 [Start Only] に設定した場合、再同期のメッセージとしてMIDIクロックの開始イベントだけが送信されます。一部の機器ではこちらの方が適切に動作する場合があります。 [Don’t Resync] に設定した場合、再同期のメッセージは送信されません。

17.3.1.3 リモート

[リモート] を有効にすると、MIDIコントローラーからLive内のパラメーターにマッピングしたり、MIDIコントローラーにフィードバック信号を送信できるようになります。

次の場合に、MIDI入力ポートの[リモート]をオンにします:

  • カスタムMIDIマッピングを作成してLiveのパラメーターを制御する。
  • MIDI鍵盤を使用してMIDIクリップをトリガーする。

次の場合に、MIDI出力ポートの[リモート]をオンにします:

  • 使用するMIDIコントローラーが、マッピングしたLiveのパラメーターの状態を反映するLEDを備えている場合。
  • 使用するMIDIコントローラーが、マッピングしたLiveのパラメーターを反映するモーターフェーダーを搭載している場合。

17.3.2 コンピューターのキーボードを使用してMIDIを演奏する

コンピューターのキーボードは、打鍵することでMIDIノートを生成できます。 コンピューターMIDIキーボードを有効にするには、コントロールバーの[コンピューターMIDIキーボード]ボタンを押すか、[オプション]メニューから[コンピューターMIDIキーボード]を有効にしたり、ショートカット M を使用します。

コンピューターMIDIキーボードを有効にする

キーボード中央の横列(文字キー)は鍵盤の白鍵に対応しており、左からC3ではじまっています。 一段上の横列は鍵盤の黒鍵に対応しています。 キーボードの下横列では、一番左の4つのキー(USキーボードの場合Z、X、C、V)で、ノートの範囲のトランスポーズとベロシティの設定に使用します。詳細は次のとおりです

  • 一番左の2つのキー(ZとX)では、キーボードのオクターブ範囲を調整します。
  • 次の2つのキー(CとV)では、受信されるノートベロシティ値を20ずつ(20、40、60など)調整します。

コンピューターのキーボードがC3からC4の間でノートを送信する設定になっている場合、キーボード中央の横列(ASDF…)が、 パーカッションサンプラー Impulse の各サンプルスロットに対応するよう、キーがMIDIノートにマップされます。 つまり、コンピューターのキーボードから、直接ドラムパターンを演奏したり録音することができます。

コンピューターMIDIキーボードを有効にすると、Liveのインターフェースに割り当てられた リモートコントロール のキーを「乗っ取り」ます。 これを回避するには、コンピューターMIDIキーボードを使用していない時は、オフに切り換えます。 さらに、コンピューターMIDIキーボードが有効な時でも、ひとつのキーだけで行うショートカット(トラックをソロにする S など)は、 Shift を押しながらそのキーを押す(例:Shift + S)ことで、そのショートカットが使えるようになります。

17.3.3 外部シンセサイザーを接続する

外部シンセサイザーにMIDIをルーティングすることは簡単です。[出力タイプ]セレクターは、シンセサイザーが接続されたMIDIポートに設定します。[出力チャンネル]セレクターは、どのMIDIチャンネルを送信するか選択します。

トラックの[入力/出力]セクションでルーティングすることに加え、External Instrument デバイスを使用すると、トラックのデバイスチェーンの内部からルーティングすることも可能です。 この場合、MIDIを外部シンセサイザーへ送信し、そのオーディオをトラック内に戻すことが1つのトラック内で完結できます。

重要 :鍵盤付きのシンセサイザーをLiveで使用するキーボードと音源の両方でお使いの場合、シンセサイザーの「Local Off」(ローカルオフ)機能をかならず確認してください。 どのシンセサイザーにもこの機能が搭載されています。これは、鍵盤と音源を分離し、2つのコンポーネントを別々の機器のように扱える機能です。 この機能を使うことで、鍵盤からMIDIを受信すると、そのMIDIやクリップからのMIDIを送信できるようになり、LiveをMIDIスタジオのハブとして利用することができます。

17.3.4 MIDI入力/出力インジケーター

Liveのコントロールバーには、MIDIの受信と送信を表示するLEDインジケーターが3組あります。 インジケーターは、信号の有無を示すだけでなく、使用状況も表示します。 各ペアは、上側のインジケーターが点滅するとMIDIメッセージの受信を示し、下側のインジケーターが点滅するとMIDIメッセージの送信を示します。

コントロールバーのMIDIインジケーター

3つのインジケーターペアは、以下を示しています(左から右)。

  1. Liveと外部シーケンサーの同期 に使用する、MIDIクロックとMIDIタイムコードの信号。 なお、このインジケーターのペアは、環境設定[Link, Tempo & MIDI]で外部同期ソースがオンになっている場合のみ表示されます。
  2. Liveのユーザーインターフェースを リモートコントロール するのに使用するMIDIメッセージ。
  3. LiveのMIDIトラックから送信したり、MIDIトラックが受信するMIDIメッセージ。

LiveのユーザーインターフェースをリモートコントロールするためにマッピングされたMIDIメッセージは、MIDIトラックにまで到達しません。その割り当てたリモートコントロールで「使い尽くされ」てしまうためです。 混乱しそうな場合は、インジケーターを見て確認すると簡単に解決できます。

17.4 リサンプリング

Liveのメイン出力を各オーディオトラックにルーティングして、録音やリサンプリングすることができます。 リサンプリングは、現在Liveセットで行われていることを即座に取り込み、サンプルを作成できる便利なツールです。 CPU負荷の高いデバイスを含むトラックを録音して、その後デバイスを削除したり、 ディスクにエクスポート する前のプレビューもできます。

任意のオーディオトラックで、[入力タイプ]セレクターに[Resampling]を選択すると、メイン出力をそのトラックにルーティングします。 次に、メイントラックから出力されるトラックのミュート、ソロ、その他の調整をして、何をリサンプリングするか選択します。 [メインボリューム]メーターを見ながら、クリッピング(赤色のメーターで表示)しない範囲で音量が上がっているか確認するとよいでしょう。 次にトラックのアームをオンにしたら、空のクリップスロット に録音します。 リサンプリング中は、録音中のトラックの出力がミュートされ、録音には含まれません。

リサンプリングで作成されたサンプルは、現在のセットの プロジェクトフォルダー 内にある[Samples][Recorded]に保存されます。 セットが保存されるまで、そのサンプルは 一時フォルダー で指定した場所に保持されます。

17.5 内部ルーティング

Liveのミキサーと外部ルーティング・デバイスでは、トラック間をルーティングさせることも可能です。 内部ルーティングは多少複雑ですが、クリエイティブでテクニカルな操作が多数可能になります。 ミキサーを介したトラック間のルーティングは、以下の2つの方法で行えます。

  1. トラック Aは出力信号をトラック Bに送るように設定されています。この設定が可能なのは、トラック Aの[出力タイプ]セレクターに、トラック Aから出力された適切なタイプの信号を受信できるすべてのトラックが表示されるためです。
  2. トラック Bは入力信号をトラックAから受信するよう設定されています。この設定を使用できるのは、トラック Bの[入力タイプ]セレクターに、適切なタイプの信号を送信できるすべてのトラックが表示されるためです。
Track AをTrack Bにルーティングする2つの方法

どちらの方法をとっても、トラック Aの出力がトラック Bに送られるようになります。 最初の方法だと、トラック Bの入力/出力設定は変更されないので、トラック Bに出力を送るトラックを好きなだけ追加できます。 これは「複数に対して 1 つ」ルーティングする手法で、サブミックスや同一のインストゥルメントを再生する複数のMIDIトラックなどに使用できます。 この場合、トラック Bをソロにすると、トラック Bに送っているトラックの出力を聞くことができます。 また、トラックAをソロにし、その出力信号を聞くこともできます。 この場合、その他すべてのトラック(トラックBに送っているトラックを含む)がミュートされます。 技術的にいうと、聞こえるのはトラックBの出力ですが、トラックA以外の信号はすべて省かれます。

一方、2つ目の方法では、出力を送るトラックBを除いて、トラックAには影響がありません。 トラックAの出力先となる、トラックBのようなトラックを複数追加することができます。 この「1つに対して複数」ルーティングする設定のよい例として、インストゥルメントをレイヤーさせることが挙げられます。

17.5.1 内部ルーティングポイント

信号は、Liveのトラックから各デバイスチェーンへと進み、トラックミキサーに入ります。 トラックミキサーでは、パンニングしたり、トラックのフェーダーで信号のレベルを変えたりします。

トラックの[Audio From]入力セレクターで別のトラックが設定されている場合(前述のセクションで 2 つ目の方法)、入力された信号は、入力チャンネルのセレクターで選択された [Pre FX][Post FX][Post Mixer] の3つの異なる地点のいずれかから送られます。

トラックルーティングの分岐ポイント
  • [Pre FX] では、トラックから送られてくる信号を、トラックのデバイスチェーン(FX)やミキサーに到達する前の段階で分岐します。 そのため、分岐元のトラックのデバイスまたはミキサーに変更を加えても、分岐された信号は影響を受けません。 別のトラックへ分岐するトラックをソロにすると、[Pre FX]で分岐されたトラックの音が聞こえるようになります。
  • [Post FX] は、トラックのデバイスチェーン(FX)を通過してミキサーに到達する前の段階で、信号を分岐します。 そのため、分岐元のトラックのデバイスを変更すると、分岐された信号も変化しますが、分岐元のトラックのミキサーに変更を加えても、分岐された信号は変化しません。 別のトラックへ分岐するトラックをソロにすると、[Post FX]で分岐されたトラックの音が聞こえるようになります。
  • [Post Mixer] は、デバイスチェーンとミキサーを通過した後の、トラックの最終出力を分岐します。 別のトラックへと分岐するトラックをソロにすると、[Post Mixer]で分岐されたトラックは聞こえなくなり ます。

17.5.1.1 ラックのルーティングポイント

トラック内にある全チェーンの分岐ポイント

トラックのデバイスチェーンに、1つ以上の インストゥルメント・ラックやエフェクト・ラック がある場合、ラック内の各チェーンでも内部ルーティングポイント(Pre FX、Post FX、Post Mixer)を使用できます。 トラックに1つ以上の Drum Rack がある場合、どのラックのリターンチェーンでも、内部ルーティングポイントを使用できます。 各ラックも入力チャンネルセレクターの一覧に表示されます。

  • (ラック名) | (チェーン名) | Pre FX — 信号は、ラックに入力されてチェーンのデバイスに到達する前の段階で分岐されます。
  • (ラック名) | (チェーン名) | Post FX — 信号は、チェーンの終了地点を通過してミキサーに到達する前の段階で分岐されます。
  • (ラック名) | (チェーン名) | Post Mixer — 信号は、ラック内のすべてのチェーンがまとめられてラックの出力が生成される前の段階で、チェーンのミキサー出力から分岐されます。

これらのポイントでチェーンを分岐するトラックをソロにすると、その分岐点でのトラックの出力を聞くことができます。

17.5.2 内部ルーティングを活用する

このセクションでは、いくつかの内部ルーティングの活用例を詳しく説明しています。

17.5.2.1 エフェクトのかけ録り

Liveにギターの音を取り込み、トラックを重ねて楽曲を構築しながら、テイクを重ねているとします。 トラックごとに別々のエフェクトチェーンを使い、異なるエフェクトをテイクごとに当てはめた方が効果の出方は大きくなります。 しかし、録音する前 の段階で、ギターの音にエフェクト(ノイズゲートやアンプモデリングなど)をかけ、エフェクト後の信号を録音したい場合もあります。

エフェクトをかけ録りする場合のセットアップ例.

これは、入力されたギター信号の処理とモニタリングに特定のオーディオトラックを用意すれば、簡単に行えます。 トラックを「Guitar」と名付け、そのデバイスチェーンに使用したいエフェクトをドラッグします。 「Guitar」トラック内では直接録音をせず、録音を行うトラックを別に複数作成します。 そして、作成したトラックがギタートラックの[Post FX]入力を受信するよう設定します。 Guitarトラックのレベルやパンを含めて録音したい場合、[Post Mixer]で分岐することも可能です。

Liveが現在どのように動作しているかにかかわらず、トラックを通過したギターの音を常に聞けるようにするには、Guitarトラックの[Monitor]ボタンを[In]にします。 他のトラックの[Monitor]ボタンは[Off]に設定します。

17.5.2.2 MIDIをオーディオにして録音する

MIDIと複雑なソフトウェア・インストゥルメントを使用している場合、MIDIを録音するよりも、出力されたオーディオを録音する方が便利な場合もあります。 例えば、単一のMIDIノートでNative InstrumentsのAbsynth を弾くと、単一のサウンドではなく、曲の一部のように聞こえるサウンドを作成できます。 この出力は、MIDIクリップ内の単一ノートで表すよりも、オーディオ波形として表した方が、編集で取捨選択する際に便利です。

オーディオトラック内に複雑なインストゥルメントの出力音を録音する

この設定は、 前述の説明 とよく似た手順で行います。 ソフトウェア・インストゥルメントを読み込んだMIDIトラックを1つ用意して、追加したオーディオトラックにインストゥルメントを演奏したオーディオを録音します。

17.5.2.3 サブミックスを作成

ドラムキットの各ドラムをサブミックス

ドラムキットをマルチトラック録音するために、各ドラムがそれぞれ別々のトラックにあるとします。 ミックスでは、各ドラムのボリュームを簡単に変更することができますが、ドラムキット全体のボリュームの調節は、曲を構成する他の楽器部分と比べると、そう簡単ではありません。 このような場合、新たにオーディオトラックを作成して、そこでドラムをサブミックスすることができます。 各ドラムのトラックはすべてサブミックスのトラックに出力するよう設定し、サブミックスのトラックはメイントラックに出力させます。 サブミックストラックを使うことで、ドラムキット全体のボリューム調整が簡単になります。

また、複数のドラムのトラックを グループトラック としてまとめると、柔軟性がさらに向上します。 グループトラックではドラムの出力が自動的にルーティングされ、グループ内のトラックの表示と非表示を切り替えることもできます。

トラックの出力をセンドのみに設定したサブミックス

Liveのリターントラックは、サブミックスにも使用できます。 トラックの[出力タイプ]は[Sends Only]を選択し、[Sends]コントロールを目的の音量になるまで上げていきます。 これで、リターントラックがサブミキサーのチャンネルとして機能するようになります。

17.5.2.4 同一のインストゥルメントを複数のMIDIトラックで再生する

MIDIトラックに、パッドシンセを再生するSimplerインストゥルメントがあると考えてみましょう。 同じインストゥルメントを使って別のテイクを加えたいけど、すでにこのトラックには録音済みのMIDIクリップが存在しています。 そこで、MIDIトラックを1つ追加します。 新しいトラックに別のSimplerをドラッグすることも可能ですが、パッドシンセのトラックにあるSimplerを再利用すれば、両方のトラックのMIDIを使ってパッドのサウンドを変化させることができます。

追加したMIDIトラックから既存のMIDIトラックに信号を送ってインストゥルメントを再利用

これを行うには、新しいMIDIトラックの[出力タイプ]セレクターをパッドのトラックに設定します。 [出力チャンネル]セレクターには、選択可能な出力先が表示されます。新しいトラックの出力をパッドのトラックの入力に送るか、直接Simplerを指定することもできます。 [出力チャンネル]の[Track In]オプションは、パッドのトラックの入力信号(録音される信号)を示していますが、ここではこのオプションを使用しません。 その代わりに、新しいトラックのMIDIを直接Simplerに送るため、”Warm Buddy Pad”を選択すると、録音とモニタリングのセクションをバイパスできます。 このセットアップにすると、両方のトラックから新しいテイクを録音するトラックを選択でき、また、同じパッドサウンドを再生することができます。

インストゥルメントを専用のトラックに分離

パッドトラックをミュートする([アクティベーター]スイッチをオフにする)と、他のMIDIトラックもミュートされてしまいます。 正確に言うと、他のMIDIトラックは再生を続けていますが、そのMIDIを再生しているインストゥルメントがミュートされています。 この状況は、パッドトラックからクリップをカットし、個別にミュートの設定が行える(さらにMIDIエフェクトを置くことのできる)第3のトラックにクリップをペーストすれば、簡単に修正できます。 この設定を行うと、元のパッドトラックは、インストゥルメントの入れ物としてのみ機能します。 新しいクリップをこのトラックに録音するわけではないので、入力タイプセレクターは[No Input]に設定しておきます。 アームボタンは非表示になるので、ミキサーの入力/出力セクションが非表示でも混乱することがありません。

17.5.2.5 インストゥルメントから各出力を取り出す

ソフトウェア・インストゥルメントの中には、LiveのImpulseパーカッション・サンプラーのように、生成した信号を複数のオーディオ出力から出せるものがあります。 デフォルトでは、Impulseはその8つのサンプルスロットの出力を内部でミックスし、インストゥルメントのオーディオ出力に送ります。 同じトラック上で、Impulseの後段にあるオーディオエフェクトは、すべてミックスされた信号を処理します。 しかし場合によっては、個別のドラムサウンドをこのミックスから切り離し、別々に処理やミックスを行いたいこともあります。 Impluseは、サンプルスロットが他のトラックに対するオーディオソースにもなるため、このような操作が可能になります。

Impluseの個別出力を使用して、別々のサンプルスロットに分けて処理

オーディオトラックを作成し、[入力タイプ]セレクターはImpulseのトラックを選択します。 [入力チャンネル]セレクターには、[Pre FX][Post FX][Post Mixer]に加え、各スロットに使用されたサンプル名に従い命名された[Impulse]の8つの出力が表示されます。 各出力をImpulseから他のトラックへルーティングすると、Impulseの内部ミックスから信号が取り出されます。 この機能は大変便利ですが、多くのプラグイン・インストゥルメントでは未対応になっています。 これらのポイントでImpulseのサンプルスロット1つを分岐するトラックをソロにすると、そのスロットの出力を聞くことができます。

17.5.2.6 マルチティンバーのプラグイン・インストゥルメントを使用する

プラグイン・インストゥルメントは、ほとんどがマルチティンバーに対応しています。 マルチティンバー・インストゥルメントとは、別々のMIDIチャンネルでMIDIを受信できる複数のインストゥルメント「パート」(メーカーにより名称が異なります)を1つにまとめたようなものをいいます。 通常、マルチティンバー・インストゥルメントには各パートごとに出力があり、パートをそれぞれ個別にミキサーへルーティングすることができます。 また、インストゥルメントにサブミキサーが搭載されていることもあります。

マルチティンバー・インストゥルメントのパートにMIDIを送り、オーディオの一部を分岐するトラック

ミキサーからマルチティンバーインストゥルメントへMIDIを送信することは、 上で説明したケース と似ています。 MIDIトラックにはマルチティンバー・インストゥルメントがあり、各パートにMIDIを送信するには、追加したMIDIトラックを使います。 追加した各MIDIトラックには、インストゥルメントを含むトラックを指定した[出力チャンネル]セレクターと、対象となるMIDIチャンネルを選択する[出力チャンネル]セレクターがあります。 追加したオーディオトラックは、 前述のとおり 、インストゥルメントの個々の出力を分岐させるのに使用します。

External Instrumentデバイスを使って、マルチティンバー・プラグインのサブ出力にMIDIを(および出力からオーディオを)ルーティングすることもできます。 この場合、各出力に対してさらにオーディオトラックを追加する必要はありません。

  1. マルチティンバー・インストゥルメントをMIDIトラックに挿入します。
  2. External Instrumentを別のMIDIトラックに挿入します。
  3. External Instrumentデバイスの最初の[MIDI To]セレクターから、インストゥルメントを含むトラックを選択します。
  4. External Instrumentデバイスの2番目のセレクターから、MIDIチャンネルを選択します。
  5. External Instrumentの[Audio From]セレクターから、MIDIの送信先であるインストゥルメントのサブ出力を選択します。

手順2-5を繰り返し、ご使用のマルチティンバー・インストゥルメントの追加コンポーネントを供給および接続します。 ラックのデバイスチェーン内にデバイスを配置し、複数のExternal Instrumentデバイスによるシステム全体を1つのトラック内に置くこともできます。

なお、マルチティンバー・インストゥルメントのメイン出力は、そのままインストゥルメントを含むトラックから出力されます。 External Instrumentデバイスに対しては、AUX出力のみ使用可能です。

17.5.2.7 サイドチェイン入力を供給する

エフェクトの中には、いわゆる「サイドチェイン入力」を備えるものがあります。 Vocoderを例にとると、ある信号(スピーチなど)から取り出されたスペクトルの特性を、別の信号(ストリングパッドなど)に適用して出力します。 Vocoderは、オーディオエフェクトとしてストリングトラックに挿入されます。 トラックにあるスピーチ信号のサイドチェインは、別のトラックから送ります。 「スピーチ」という名前のオーディオトラックを追加作成し、[出力タイプ]セレクターを「ストリング」トラックに設定してみましょう。 [出力チャンネル]セレクターから、ボコーダーのサイドチェイン入力を選択します。

ボコーダー・プラグインの中には、「キャリア」信号を生成するシンセサイザーを内蔵したものがあります。 この場合、ボコーダー・インストゥルメントは、オーディオトラックではなく、MIDIトラックにドラッグします。 オーディオをサイドチェイン入力へ送ると、前述の説明と同じように動作します。

Liveの内蔵デバイスには、トラックにあるものと同じルーティングのセレクターを備えた、独自のサイドチェインコントロールを備えるものもあります。 そのため、これらのデバイスを使用する際、上記の手順に従う必要はありません。 この場合、デバイス内でサイドチェインソースを選択できます。

17.5.2.8 インストゥルメントをレイヤーする

ストリングのサウンドを再生するインストゥルメントのMIDIトラックがあり、同じノートでブラスのサウンドを再生して、ストリングサウンドを補強したいとします。 これを行うには、ブラスサウンドを再生するインストゥルメントのMIDIトラックを追加して、[入力タイプ]セレクターでストリングトラックの[Post FX]信号の一部を分岐するように設定すると簡単にできます。

補助的なMIDIトラックを使用したインストゥルメントのレイヤー

ストリングトラックの出力は、MIDIではなくオーディオのはずなので、どのように機能するのか不思議に思うかもしれません。 MIDI入力を別のトラックからルーティングする時、MIDI内の一番最後(MIDIエフェクトの後、インストゥルメントのすぐ前)の部分でMIDIが分岐されます。